ふしぎな宿題

4
4

風に秋の匂いが混ざっていた。もうすぐ九月。
ということは、夏休みの宿題を片付けなくてはいけない。
残っているのはひとつだけ。
「何でもいいから失敗してきてください」というものだ。

朝からずっと考えているけれど、そもそも何をしていいのか見当がつかない。
途方に暮れ、公園でブランコに揺られていると、担任のエヌ先生が歩いていくのが目に入った。
きいてみよう、とブランコから飛び降り、駆け寄っていった。

事情を伝えると、先生は「ヒントね」と話し始めた。
実は先生はロボットで──腕を外してみせた──、失敗することができないという。
言いかえれば「失敗する可能性のあることはできない」。つまり、成長しない。
失敗と成功は向いてる方向が違うだけで、価値は一緒なんだって。

最後に先生は、こういった。
「だから、失敗を怖がらないで、精一杯失敗してきてください」
ファンタジー
公開:21/08/25 09:24

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容