シンメトリー7

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「コーヒーでよかったですか?ミルクは……そうですか。私は、ブラックでは飲めないのですよ。飲める男って、憧れますね」 
ヤツのダディは、不自然にベラベラ喋った。まるで、話を本題へと移したくないようだった。 
「君は紅茶が好きだったね。レモンは入れない、と」 
そうだ。僕は紅茶にレモンを入れない。酸っぱいのは苦手なんだ。一方のヤツはホットミルクで、そのうえ激甘らしかった。お子ちゃまというか、なんというか。 
「お菓子もどうぞ。ラング・ド・シャです」 
ダディはまだ、本題に移らない。僕は、母さんの態度が気になっていた。最初、通されたヤツの家のキッチンで上品に座っていたけれど、だんだんと目が据わったようになり、足を組み、組み替え、今は腕も組んでいる。 
「さて、どこから話しますか」 
観念したように、ヤツのダディが口を開く。ニャアと鳴いたこの家の猫は、ピカソの絵のように、ちぐはぐな顔をしていた。
ファンタジー
公開:21/08/23 03:31

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