好きだと言っていたじゃないか

ったく、某有名歌手の唄じゃあるまいし。
「で？今日は？」　
「好きだと言っていたんだ！」　
「それはわかった！なんでフラレたのかって聞いてるんだ」　
「ーースナフキン」　
「は？スナフキン？スナフキンてあの、ムーミンの？」　
「そうだよ！ムーミンに出てくる、孤独を愛し、冒険を愛し、ロマンを愛する、カッケー男だよ！」　
カッケーって……。　
「それを、大好きだと、言ったのさ、彼女は。ーーなのに」　
「なのに、スナフキンの格好をしたお前を見て、『カッコ悪』か。ーーだろうな」　
「はぁっ！？」　
「あのなぁ！どこの世界に、一人旅が好きで、女を放っておくのが容易に想像つく男を好きになる女がいるんだ！まあ、世界広し、いるにはいるかも知れん！だが、あの子は違う。うー……もういい！」　
そこまで言うと、俺は奴を放って、出ていった。　
　バカなあいつの元カノは、エリート官僚の俺の元カノだったのだ。