楽園を去るひとびと

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薄暗いビルの床に、足音が響く。
カゴに入った飼料を抱え、私は飼育ルームへ向かっていた。
身長は私の二倍、体重は十倍以上の彼らは、大量のエサを消費する。

セキュリティを通過し、部屋に着く。
ひんやりとした部屋に、うなり声が響いていた。
カゴから四角い箱を取り出し、彼らに与える。これがエサだ。

ふと思った。
人間がエサ……「ログ」と呼ばれるこれを食べたら?
それは禁じられている。だが、神話にある禁断の果実を想起させた。

吸い込まれるように、エサをかじってしまった。
──刹那!
情報の奔流が私を襲う。
アラートが鳴り、人が駆け込んできた。そこで、私の記憶は途絶えている。

薄暗いビルの床に、足音が響く。
誰かが、エサを持ってきたのだ。
今日も、それを咀嚼する仕事が始まる。

私がエサを運んでいた記憶が読み出されたが、エラーだろう。
私が人間であったなんて、ありえない。……ありえない。
ファンタジー
公開:21/08/18 09:48

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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