記憶の中の人
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小さい頃から、慣れ親しんだ施設といえば、病院だった。定期検診のために病院に行くと、私は決まって、あるおじさんと遊んだ。おじさんはいつもパジャマを着ていた。緑色のストライプ。入院患者だと気づいたのは、十数年後の今だけど。
おじさんは、私をとても可愛がってくれた。うろ覚えだけど。おじさんは、いつも一人だった。うろ覚えだけど。面会の人を、見たことがなかった。うろ覚えだけど。
ある日、私に会いに、両親が来た。あちら一人なら迷惑にはならないだろうと、おじさんに紹介した。
「パパとママだよ」
それから、あの人を見ていない。両親も、そんな人いたっけ?と言う。
どうしてだろう。子供、いや、赤ん坊の頃の記憶が、最近頭に巣くっている。そして、今でも時々、聞こえるんだ。
「家族いるのな、おまえ」
と言っている、なにやら恨めしそうな声が。
おじさんは、私をとても可愛がってくれた。うろ覚えだけど。おじさんは、いつも一人だった。うろ覚えだけど。面会の人を、見たことがなかった。うろ覚えだけど。
ある日、私に会いに、両親が来た。あちら一人なら迷惑にはならないだろうと、おじさんに紹介した。
「パパとママだよ」
それから、あの人を見ていない。両親も、そんな人いたっけ?と言う。
どうしてだろう。子供、いや、赤ん坊の頃の記憶が、最近頭に巣くっている。そして、今でも時々、聞こえるんだ。
「家族いるのな、おまえ」
と言っている、なにやら恨めしそうな声が。
公開:21/08/18 06:51
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