シンメトリー2

3
3

国境の向こうに住むもう一人の僕。でもそれはよく見れば僕ではなくて、なぜそれがわかるかというと、動きが違ったからだ。僕が右手を上げると、彼は左手を上げた。僕が左に首をかしげると、彼は右に首をかしげた。ーーでも、待てよ。本当に違うか?僕らの動き。僕が手をあげて、どうして彼も、手を上げる必要がある?僕が首をかしげたときに、どうして彼も、首をかしげる必要がある? 
「こんにちは」 
彼が言った。突然のことで、僕は動揺した。だから、質問する役は、ほとんど向こうだった。
「君、お母さんは?」 
「いるよ。買いものに行ってる」 
彼は笑った。 
「それはつまり、『今は』いないということだね。君にお母さんはいる。でも、『今は』君のお母さんはいない。今はいないけど、いる。さっきまではね」
「君のお母さんは?」 
「いるよ。買いものに行ってる」 
同じことを言われた。それがなんだか、しゃくだった。
公開:21/08/15 22:59

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容