雪の下にて

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目を開けると、そこは色のない世界ーーいや、色はある。灰色か、白。はたまた黒?ーーそれはないな。 
俺は、今どこにいるのだ?ベッドの上、自室でないことは確かだ。俺の部屋は、こんなに白くない。こんなに暗くない。 
ふと、どこからか声、のような音が聞こえた。
おーい。おーい。誰かいるかー。 
誰だろう?あの声。わからない。だけど、わかったこと、一つ。 
(死んだんだ、俺。そうか、雪の中) 
そう、雪の中、雪の中にいるのだ、俺は。俺は、登山家で、外国の山を登っていて。遭難して、雪に降られて。 
そうして今、ここにいる。  
 
生きながら、ここにいる。
死にながら、ここにいる。 
綺麗なままの、状態で。 

生きているのか、死んでいるのか。
自分でもわからない。 

誰か、見つけてくんねえかな。
生きているのか、死んでいるのかそれだけが知りたい。 

それだけ知れたら、この人生の、幕を閉じよう。
その他
公開:21/08/11 10:35
亡くなった 大ファンだった 登山家さんを思って 書きました

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