小さい本屋ーおおかみ達の言い分ー

0
1

「仲良くなりたいだけなんだよ、本当。オレらはさ。だけど、なあ?」 
「ああ、この口と腹が、目の前にいるお友達を、ウェルカムしているんだよ。ったく、意地汚いったら」 
「オレだって同じさ。あそこは寒くて、寂しくてよお。家に入れてもらいてえだけなんだ。でも、むこうが用心して入れてくれないから、つい、さ」 
「つい、な」 
「わかるよ、つい、だろ?」 

本屋の片隅で、彼らは語り合っていた。それに聞き耳をたてつつ、店主はコーヒーを入れていたが、はたと思いついて、淹れたてのコーヒーを見下ろす。ーーはたしておおかみって、コーヒーは飲むのだろうか? 
「いや、飲まないか。さてーー」 
店主は何の気なしに宙を見上げる。時計が目につく。 
「もうすぐ十二時ーーはっ!」 
とたんに背筋が寒くなる店主。慌てて客人のもとへ。
「お昼、ご一緒にどうですか?」 
「肉か!?」 
おおかみたちが、一斉にこちらを見た。
ファンタジー
公開:21/08/10 11:08

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容