小さい本屋ー赤ずきんー

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店主がふと顔をあげると、誰かが店の前のベンチに座りました。その姿に見覚えがあった店主。外に出て、その子に声をかけました。
「中へどうぞ。その格好では、暑いでしょう?」 
ところが、その子はふい、と顔を背け、店主の厚意を無視しました。おや?店主は気分を害しませんでしたが、こりゃあ、困ったと思いました。 
そのまま、ドアに手を掛けて、少女を見下ろしたままでいると、少女が口を開き、ぽつり、ぽつりと話しはじめました。 
「こっちの世界は、恐いのねえ。やさしく声をかけられて、ついていってみれば、危険な目に遭わされるーー」 
ま、私がいたところも、大差ないけど! 
少女の口調は、強がりに見えました。そんな少女に、店主は言いました。 
「オオカミさんのおなかから、出てきたところに戻しましょうか」 
少女ーー赤ずきんは、潤んだ瞳で、うなずきました。
ファンタジー
公開:21/08/10 07:26
更新:21/08/10 07:28

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