小さい本屋ーシンデレラー

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「灰かぶり姫、わたしはそう呼ばれています。呼ばれてはいますが、誰が好んで、こんな名前にします?わたしはいや。自分の名前が嫌い、だったけど……」 
「だったけど?」 
「こっちに来てすぐ、噴火が起きたんです。怖かった。すごく怖かったけど、わたしは立ち上がりました。逃げ惑う皆さんのため、道案内をかって出たんです。灰を被ったんです、皆さんの代わりに。ーーすごいでしょ、っていう自慢に聞こえますか?」 
灰かぶり姫の質問に、店主は首を左右に振りました。そうして、「シンデレラ」の本を開き、言いました。 
「このページにお戻りください。そして、幸せになるのです。やさしい灰か、いえ、シンデレラ。着ているものは、どうにでもなります」 
そう言われ、灰かぶり姫ーーシンデレラはじっ、とそのページを見ました。それから柔らかくうなずいて、素直に帰って行きました。
王子様の待つ、彼女の新しい家へーー。
ファンタジー
公開:21/08/10 21:03

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