ワライカワセミ

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書斎の隅で、ワライカワセミを飼っている。事あるごとに鳴くそいつ。いや、笑うそいつだ。
私はもう新人とは言えなくなった作家である。ただいま絶賛スランプ中。今日もまた書けずに、その姿をワライカワセミに笑われていた。 
「ええい、うるさいうるさいうるさい!」 
私が怒鳴り、鳥かごを揺すると、妻が入ってきて、冷酷に言った。「あんたバカ?落ち込んでる暇があったら、顔を上げろ、つってんだよ、この子は」 
ーーホント、口の悪い若妻だ。 
 でも、そうか。妻の言う通りかもしれない。こいつは俺を励ましているんだ。ーーよおし! 
 俺は筆を執った。そうして、長年の夢だった賞を取った。歓喜した。 
「やった、やった、やったぞ、エミちゃん!」 
エミちゃんとは、ワライカワセミの名。彼女は喜ぶ俺をじっ、と見た。そして、 
「……へっ」
妻と共に、冷たく笑った。
ファンタジー
公開:21/08/09 14:31

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