等価交換の世界

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 昔、物はお金というもので買えたらしい。
 歴史の本で見たことがある。

 今は、等価交換で成り立っている。
 世界政府がすべてのものの価値を決定し、等価のもの同士を交換するのだ。
 冷蔵庫が壊れたら、同じ機能を持つ代替品が政府から送られてくる。
 辛いことがあったら、それと等価のできごとが用意される。

 ある日、父がいなくなった。
 翌週、玄関の呼び鈴が鳴って出ていくと、政府の役人が立っていた。
 父と等価のアンドロイドを持ってきたという。
 その日から、彼(というのだろうか?)は家族になった。

 彼は父の通っていた会社に行き、
 父と同じように飲み会で遅くなり、
 父と同じように小言を言い、
 父と同じように家事をして、ある日、
 父と同じようにいなくなった。

 ちなみにこのアンドロイド、等価交換されてから27体目だ。
 まもなく政府から、次の「父」が送られてくるのだろう。
SF
公開:21/11/03 10:49

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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