次世代テレホンカード

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「はい、お疲れさん」
きょとんとした顔の青年に向け、私は告げる。

突然だが、テレホンカードをご存じだろうか。
公衆電話で使うプリペイドカードではなくて、最新のほう。
見た目は昭和にあったそれと同じだが、今のはもっと高機能だ。
公衆端末で使うと、カードの残高分だけ、相手のところに物理的に移動できる。
三十分程度の短時間ではあるが、身体そのものを転送できるのだ。

このカード、非常に高価だ。
そのため偽物が出てくる。犯罪にも使われる。
そこで、我々はおとり捜査を実行した。
闇マーケットに、我々が作成したカードを撒いたのだ。
我々とは、警視庁遠隔犯罪課。私はその職員だ。

カードを使う時、端末に相手の識別番号を入力するのだが、我々のカードは、どんな番号を入れても転送先は同じ。
つまりここ──警視庁にある我々の取調室、というわけだ。
ファンタジー
公開:21/10/20 10:01

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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