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人の感情は、他人を巻き込むことがある。
その損失を重くみた政府は、負の感情を制御することを考えた。

悲しみ、怒り、絶望といった負の感情は、雷のように発生する。
誰かの中に生まれた感情は、表情、言葉や仕草を通じて、周囲の人へと広がっていく。

この広がりを捉え、負の感情を吸収する「避涙針」が設計され、人の集まる場所、公共施設などに敷設された。

避涙針は進化し、スマートフォンを通じて人の心に接続された。
負の感情が生まれた瞬間、最寄りの避涙針がそれを吸収するのだ。
世界から負の感情は消え、成功したかに見えた。
だが、人々の心は以前にも増して不安定になっていた。

負の感情は、自身で「処理」することによって消えていく。
その機会を奪ったことで、人の心により大きな歪みが生まれたのだった。
特に、涙を流すことは、人にとって呼吸をするのと同じくらい、大事なことだったのだ。
ファンタジー
公開:21/09/22 09:35

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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