吊り橋の上のアンデッド

夕方五時、職場の先輩から、地下にある書類倉庫にダンボールを持っていくことを頼まれた。あたし一人では大変、ということで、一年下の後輩君が付き添ってくれた。
台車を押して、エレベータで地下一階まで降りる。薄暗い廊下の一番奥まで進み、倉庫の鍵をあけた。
スイッチを押すと、蛍光灯の明かりがフラッシュライトのように点滅した。突き当りのロッカーが突然開き、顔の半分溶けたアンデットが襲いかかってきた。
あたしの正拳突きが、アンデッドの鳩尾にめり込む。アンデッドはうずくまり、埃の積もった床に倒れ込んだ。
全国学生女子空手選手権の組手ベストエイト。寸止めが原則だが、今回はそんなことは言っていられない。
後輩君があわてて、アンデッドに駆け寄る。アンデッドのマスクがはがれ、あたしの同期の男子社員の顔が見えた。
先週の飲み会で、男連中が「吊り橋効果」の話で盛り上がっていたことを思い出した。姑息なことを。