一人前になった日

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朝の品川駅。行き交う人の群れをぬいながら、私は急ぎ足で進んでいた。
今日、大事なプレゼンがある。その前に用事があるのだ。

改札を通り、店が並んでいるエリアの奥へ進む。
目的地の店には列ができていて、最後尾に並んでようやく一息ついた。

ここは、いわゆるエナジードリンクを売っている。
飲むとやる気や元気が出るアレだ。
この店のは特殊で、「営業周り」「リリース日」など、用途別に調合されている。

私の番が来て、「プレゼン」を注文した。
何度これに助けられたことか。
出された透明な緑色の炭酸水を口にすると、爽やかな感覚が身体の中に落ちていく。

……なにかおかしい。

すぐ力が湧いてくるはずなのだが。
私を見て、店主が言った。
「効かなくなりましたか。おめでとうございます」
どういうことかと聞き返すと、
「これは、新人にしか効かないんです。あなたはもう、一人前になったということですよ」
ファンタジー
公開:21/05/19 10:00

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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