待っている

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待ち合わせ、とくにデートの待ち合わせ場所として有名な駅前のスポット。秋田犬、ではなく、誰かのいたずらで置かれたダックスフントのぬいぐるみのそばで、わたしは彼を待っていた。もう、かれこれ15分も。
「なにやってんだ?あいつ」 
わたしの耳には、カップルたちの甘い囁きが侵入してくる。怒っているのは、わたしだけ。と、その時だ。 
「まあ、そうカッカしなさんな」 
誰かが言った。周りを見ると、あのぬいぐるみだった。「待っているあいだ、わしと遊ぶかい?」 
「え?遊べるの?」 
うん、たしかに遊べた。が、手をパンパン叩くだけで終わった。振動で鳴くおもちゃだった。 
そのうち、雨が降ってきた。毛が濡れて、茶色が濃くなるぬいぐるみ。わたしは決心した。 
「チョコ、今帰るぞ!」 
ちょうどその時、彼氏が到着したなんて、わたしは知らない。
その他
公開:21/08/01 10:21

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