「おいしい」で終わらせてはいけないレストラン

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「語彙力のある方お待ちしております」 
 そう書かれた看板を見つけて、俺は、道を曲がった。 
店に入ると、早速だ。そこここから、芳醇な、とか、舌の上で転がすと、とか聞こえてくる。ここは、「おいしい」と言ってはいけないレストラン。まずいわけではない。おいしさを表現する言葉は、もっとあるだろ、って話。なので、客の年齢制限をもとめる。子供はNG。でもなぜか高校生やチャラい大人はOK。 
解せぬ、と子供好きの私が言うと連れが、「あいつらってすごいじゃん。どんどん若者言葉を開発してさ。なめちゃいかんよ」という。なるほど、開発か。 
 高校教師であり、いいおじさんである私は、日々飛び交う若者言葉に苦い顔をしていたが、そうか。それなら。 
私はウェイターに「ツイッター」を頼んだ。これで喋りの天才になるのだ。と思っていたら連れが言った。「喋りすぎて、『老害』って言われるなよ。あとそれ、フリッターな」 
公開:21/07/29 06:58

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