タガの部屋

我が社に、秘密の部屋があるという噂がある。
売上が芳しくないとき、役員達がそこで何かしているという。
残業の日。誰もいないのを見計らい、探ってみることにした。
階段をおり、地下室を進む、他とは違う木製の扉があった。開いている。

中は大きな空間だった。柱が並び、床には工具が散らばっている。
男が、柱に巻いた金属の板が、緩んでいるのを締め直していた。
見ればそれは社長だった。
工具とともに放り出されていた部屋の鍵を失敬し、私は部屋を去った。

翌日、何の前触れもなく業績が回復した。
噂は本当だったようだ。
あの柱の板を、もっときつく絞めればさらに業績も上向くはず。
部屋に忍び込んだ私は、力の限り絞めた。

次の日、粉飾決裁が見つかって大騒ぎになった。
そんなはずは、と柱の部屋に行くと、閉めすぎた板が割れて床に落ちていた。
そこで気づいた。「タガ」が外れてしまったことに。