夜汽車に沁みる

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意味などなかった、そう彼女は言った。意味がないことを確かめるだけの旅だったと。 
では、どうして君は、笑っているんだい? 
意味があったから。
ん?意味は、なかったのだろう? 
ええ、その先にはね。だけど、振り替えると、たくさんの意味があった。なぜ歩いてきたのか。なぜ生きているのか。 
 
彼女の言葉は、私には難しい。彼女は私より大人だ。ずっと。ずっとずっとーーずっと。 
夜汽車は揺れる。静寂のなか。夜汽車に沁みる。私の涙が。 
「あ……」 
 手紙の末尾に、涙の跡。 
「意味は、私にあったのだね」 
 私は気付いた。夜汽車を降りよう。決められたレールから、ほんの少し、ずれてみよう。そうして、君に手を伸ばそう。 
 一緒に迷子になってみないか。その先では、きっと、いろんな意味に出会える。 
 僕らが出会った意味についても、きっとこれから出会うだろう。 
 きっと。きっとーー。
その他
公開:21/07/23 04:17

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