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諸事情で実家に帰れない人のために、「家族煙」「親戚煙」なるものが発売された。 
「家族?家族ねえ」 
「そんなあなたに!」 
 適当に聞いて流してやれ、と考えた俺に、「家族煙」「親戚煙」開発者の彼女は言った。 
「ねえ、しんちゃん。家族に会うのが億劫なのはわかるよ?でもさ、あたしは会いたいよ。付き合って、もう5年だよ?そろそろさ、ね?」 
 彼女の上目遣い。弱いんだなあ、これによ。 
 仕方なく俺は、「家族煙」を購入した。お代は特別タダだった。 
 早速、「家族煙」を指で擦る。煙と共に母親の顔が現れる。 
「あ、圭太?あんた、いま何してるの?家を出て以来、10年も連絡しないで!もうすぐ夏休みでしょ?今年こそ帰ってきな!あ、でも、部屋はそのままよ。そのままって、つまり汚いままってこと!片付けはあんたがしなね。あ、それとね」  
「け、煙たいおばさん……」 
 彼女が言った。
 
青春
公開:21/07/17 14:26

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