注射針ネズミ

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院内に、子供の泣き声が響く。けれど、看護師は決して慌てない。にこにこと笑顔を絶やさない看護師は自分の頭に手をやると、髪の毛を一本抜いた。 
「はあい、赤ちゃん。すぐ終わりますよう。お母さん、しっかり押さえていて」 
 ピッ。
 看護師が赤ちゃんに施したのは、自らの針を使った注射。瞬間、看護師は悲鳴をあげる。 
「いっ!」 
 泣き叫ぶ看護師。自分の頭に生えていた針だ。それを人に使うことで、患者と一体化するのである。それがまた痛いのなんの。そのせいで、時々こうなる。 
「はりねずみさん、どこか痛いの?いたいのいたいの、とんでけえ」 
 泣いていた赤ちゃんが、看護師を慰める。その優しい行為に、今度はお母さんがほろりと泣くのであった。
ファンタジー
公開:21/07/15 14:26

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