尻尾のささやき

出勤すると、私はズボンのベルトを取り替えた。
そういう決まりなのだ。
ベルトには２０センチほどの、棒状のデバイスがついている。

朝礼が始まり、同僚が報告を始めた。
すると、彼のベルトのデバイスがぴこん！と尻尾のように立ち上がる。
皆で報告内容を確認し、不具合が見つかった。

このデバイスは、「尻尾を出した」ことを知らせる。
ウソ発見器のようなものだが、本人も気づかない勘違いや忘れものが発見できるので、重宝されていた。

昼休み。
同僚が、元気かと声を掛けてきた。
よく寝てるし大丈夫、と言ったところで、私のデバイスが反応した。
立ち上がるだけでなく、デバイスの放熱フィンが開き、まるいで尻尾が膨らんだみたいだ。

医療スタッフが来て検査され、心臓に血栓が発見された。
すぐに手術となって、一命を取り留めた。
発見が遅れたら、命も危なかったらしい。

尻尾と同僚に感謝するしかなかった。