彩り移ろい 〜 太陽物語

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桜の中で生まれた君は
芽吹く青葉に勢い深め
落ち葉舞う季節に別れ
降る深雪に思いは募り

そしてまた季節は巡る

月日を重ね彩り移ろい
降る年月に体も年老い
朽ち果て尽きる影遠く
母なる大地に戻り逝く

気がつけば立派な牡鹿となった私は、野山を駆けていた。

最後の記憶はいつだったろう?
思い出すのは、ただ妻の面影のみ。
ああ、このまま獣として生きるのだろうか?
時折おそう人の意識が恐怖を思い起こさせる。

突如、それは雷光とともに現れた。
妻に会いたいか?と、ただ問われた私は、何も言わずに頷いた。

すると、どうだろう。

翌春に、頭にコブができた。
それはむくむくと成長し、立派な枝角が現れた。

川面に移る姿に見入っていると

”あなた…”

愛おしい声が、角から響いた。

妻は今でも私の上で、愛おしい声を響かせている。
春になれば舞い降りて、季節とともに別れゆく。

今は昔の物語。
ファンタジー
公開:21/06/15 18:00
更新:21/06/15 18:33
#太陽物語

やまのまや( 東京 )

目を留めていただいて、ありがとうございます(^^)

さぁさ! もの語りをはじめよう

400文字の小箱の奥に
ぎゅっと詰まった言の葉と

明けた途端にポンと広がり
はらり舞い散るヒトハシのムゲン

垣間見えるは神か悪魔か
ひと筆つづりて 心留め置き
今日も今日とて 世界を創る

さぁさ! もの語りが始まるよ!

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