やる樹

園芸店で、ふしぎな種を見つけた。
「やる樹」という名で、赤い実を付けた木の写真が印刷されている。
園芸の趣味はないのだが、買ってしまったのだ。

説明書きの通り、植木鉢の底に石を積め、次に土を入れる。
土に触れるなんて久しぶりで、熱中してしまった。
種を置いて土を被せ、霧吹きで水をかけた。ちょっとした達成感。

ところが、一月たっても芽が出ない。
水を絶やさず、栄養剤をまき、日なたに置いたりもした。
これだけ手をかけてるのにと思い始め、いつの間にか忘れていた。

そこからだ。
朝、親指の先ほどの芽が出た。
仕事から帰ってきたら、手のひらほどに成長していた。
なぜ急にやる気を出したのか分からないが、そこから毎日伸び続けた。

今は１メートルを超える立派な樹になっている。
成長は続いていて、天井を突き破ってしまいそうだった。

目下の問題は、どうやってこの樹の「やる気」を削ぐか、ということだ。