ときの旋律

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祖父の葬儀を終え、私は書斎を訪れた。
木の机、使い込まれた万年筆、古めかしい蓄音機。
すべてが丁寧に手入れされている。

蓄音機の横に、レコードが並べられていた。
その中に、楕円形で、ねじ曲がった模様が描かれたものがあった。
気になって、レコードを蓄音機にかけ、針を落としてみる。

聞こえてきたのは、単調なリズム。
やがてテンポを増し、勇ましい旋律へと変わっていく。
転調を繰り返し、楽器が増えながら、賑やかに。
やがてゆっくりとフェードアウトしていった。

レコードに視線を落とすと、そこには祖父の顔があった。
刻まれた溝が、祖父の顔に刻まれたしわと同じだった。
そうか、これは。

祖父の身体に刻まれた人生、そのものなのだ。

私は、そのレコードを譲ってもらうことにした。
祖父の思い出を胸に、私は思う。
これからの人生で、私は、どんな溝をこの身に刻み、どんな曲を奏でるようになるのか、と。
ファンタジー
公開:21/03/24 13:37

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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