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十年に一度の夜だ。
雨戸の内側に渡っている縁側は、普段より一層ピカピカに磨かれている。親類縁者が集まって大座敷で支度をする。酒や米、菓子が山の様に積まれている。
準備ができると庭の方から雨戸を外す。縁側に月の光がさっと射し、ピカピカの床が光って、そして、ザザッと流れ出す。まるで川の様だ。
座敷を囲む様にして、縁側が大きな川になった。表面が波打って、月の光が射す奥には、川底の岩や魚が見える。
「来た来た」と誰かが言う。上流の川面に人の姿が映っている。座敷に居る者ではない。それは、この家に縁のあった、先祖代々の人たちの姿だ。彼らの面影が、桜の花びらの様に縁側の川面をくるくると回りながら、こちらへと流れて来る。顔も知らない先祖や、去年亡くなったお婆さんも見える。笑って手を振っている。こちらも手を振り返す。
幼くして亡くなった者の笑顔に涙して、お供え物を川に流した。
これを「縁川」と呼んでいる。
ファンタジー
公開:20/12/23 23:56
更新:20/12/26 23:53

北澤奇実

慌てて書きましたが、七夕祭りに間に合いました!

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