永久機関の憂鬱

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夕日の照らす公園で、僕は声をかけられた。
「実はわたし、神さまでして」
品の良いスーツ、オールバックに整えた黒髪。年の頃はよく分からない。
「ちょっと話、聞いてくれません? 誰かに話したくて」
何の勧誘かと身構えたが、不思議とこの人は大丈夫、という気がして。
私は「神さま」と、ブランコに並んで腰掛けた。

いわく。
何でも願いが叶う木を生やしたという。
願いを叶えると、人が放つ正のエネルギーが木に戻り、他の願いを叶える力となる。
希望という力の永久機関。
すごくいいものですねと告げると、神さまの表情が曇った。
それが今日、枯れてしまったというのだ。

願いの叶った人は、希望を胸に、他の人の願いを叶え始めた。
結果、正のエネルギーが供給過多になり、木が破裂してしまったのだという。

そういえば。
僕は今日、会社を興した。
偶然、投資してくれる人に出会ったからだ。
ファンタジー
公開:21/02/11 11:53

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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