ユカリ配達人

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俺は便りならぬユカリを届ける配達人だ。誰もが眠りにつく頃、月の光に染まる銀のバイクに跨り、星空を疾走して人々へユカリを届ける。多くの人は勘違いしているが、自分が両親から生まれ、さらにその両親は……と自身のルーツを思い描けるのはユカリが心の中にあるからだ。俺はそのユカリをあなた達の先祖からあなたへ届けることを依頼されて運んでいる。
ユカリとはこの宇宙の中心に生える「縁の大樹」の種だ。全ての命はその樹と繋がっていて、一枚一枚の葉は命そのもの。つまり葉が落ちれば命は失われ、葉が芽吹けば新たな命が生まれる。その記憶を宿したユカリの種を俺はあなたの心へ届けに行く。やがてその種はあなたの涙を栄養に心に根付き、大樹に花を咲かせる。
その花を見てみたいって?
それはあなたがユカリを胸に精一杯生きた後のご褒美だ。
宇宙の暗黒に咲き誇る満開の命の花はそりゃあ見事なものさ。
だから今日を明るく笑顔で生きてくれ。
ファンタジー
公開:20/10/07 12:00
更新:20/10/07 11:41
コンテスト

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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