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「ゆかり食堂」では訪れた人にとっての縁の味といえる料理を振る舞ってくれる。
だから決まったメニューはない。お客さんそれぞれにとっての縁ある食材と味付けの料理をマスターが即座に調理して出す。寡黙だが優しい雰囲気のマスターはお客の顔を見ただけでその人がどんな懐かしの味を求めて店を訪れたのかが瞬時にわかってしまう。見習いとして働き始めたばかりの私はその域には程遠い。
ある日、食堂に一人のお婆さんがやって来た。厨房からお客の顔を見ていたマスターが調理を始め、瞬く間に料理を作った。私がそれを席に運ぶとお婆さんが笑顔で言う。
「ああ、この香り。懐かしいわ」
お婆さんは夢見るような目で料理を眺めると箸をとり、口に運んだ。
「この味よ。亡くなった母の得意料理だったの。もう二度と口にできないと思っていたけど」
そして静かに涙を流した。
あなたも懐かしの味が恋しくなったら、このゆかり食堂に是非お越しください。
だから決まったメニューはない。お客さんそれぞれにとっての縁ある食材と味付けの料理をマスターが即座に調理して出す。寡黙だが優しい雰囲気のマスターはお客の顔を見ただけでその人がどんな懐かしの味を求めて店を訪れたのかが瞬時にわかってしまう。見習いとして働き始めたばかりの私はその域には程遠い。
ある日、食堂に一人のお婆さんがやって来た。厨房からお客の顔を見ていたマスターが調理を始め、瞬く間に料理を作った。私がそれを席に運ぶとお婆さんが笑顔で言う。
「ああ、この香り。懐かしいわ」
お婆さんは夢見るような目で料理を眺めると箸をとり、口に運んだ。
「この味よ。亡くなった母の得意料理だったの。もう二度と口にできないと思っていたけど」
そして静かに涙を流した。
あなたも懐かしの味が恋しくなったら、このゆかり食堂に是非お越しください。
ファンタジー
公開:20/10/06 10:00
更新:20/10/06 12:44
更新:20/10/06 12:44
縁
コンテスト
空想と妄想が趣味です。
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