ゆかりヶ丘のシェアハウス

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「そろそろ見えてきます…あ、ほら、あの丘の上のあちらがそうです」
そう言って、車で私を案内する不動産屋の営業の男性がちらりと振り返った。窓の外を見ると、確かに丘の上に淡いパープル色の不思議な建物がある。
その建物の前で車を停めると、男性は建物の中へ私を案内した。
「この丘はゆかりヶ丘と呼ばれておりまして、こちらのシェアハウスでは世界中から訪れた人々が次に生まれ変わるまで滞在しております」
そのハウスで出会った人々は初めて会うはずなのに皆どこか懐かしい。
私はそこで一人の女性と親しくなった。ハウスの建つ丘にある花畑でいつまでも語り合った。そして別れ、つまり互いに生まれ変わる日が来た。

僕は今年で20歳。これまで人生で出逢う人々にどこかで会ったことがあるような不思議な気がしてきた。でもうまく思い出せない。
「はじめまして」
ある日偶然に出会った女性の笑顔に僕は言いようのない懐かしさを覚えた。
ファンタジー
公開:20/10/04 11:00
更新:20/10/04 10:01
コンテスト

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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