原子煙草

趣味嗜好が、人に不可欠なものであることに異論はないだろう。
私の研究対象である煙草も、そのひとつ。

ご存じの通り、煙草は問題が多い。
吐き出した煙は周囲に散り、吸い殻が残り、喫煙者の健康を害する。
解決したい課題だった。私自身、喫煙者だから。

そこで生み出したのが、この原子煙草。画期的な品だ。

火を付けると化学変化で二酸化炭素を吸収、酸素を発生させる。
この過程で有害物質も中和され、喫煙者自身には無害。
もちろん、煙草の味や成分は残してある。
吐く煙は通常の呼気と同じ、つまり無害。

私自身を実験台とし、一年ほど吸い続けている。問題はない。
……そう思っていたが、最近残念なことに、欠陥が見つかった。

二酸化炭素から酸素ができる時、炭素が生まれる。
これは、喫煙者の体の中に残るんだ。
そしてこの煙草を吸い続けると、肺の中に石ができてしまう。

──炭素の単結合、ダイヤモンドが、ね。