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私は夕暮れ時の自動販売機の写真を撮るのが趣味。夕陽を背景に佇む自販機が哀愁を誘う素敵な写真になる。
ある日、撮り溜めた写真を見返していると不思議なことに気づいた。どの写真の自販機の傍らにも同じおじさんが写り込んでいたのだ。
とりあえず近所の自販機へと行ってみた。そのときちょうど自販機が開き、中からおじさんが出てきた。
呆気にとられている私におじさんが言った。
「もしかして、私が見えてたりします?」
頷く私におじさんが困り顔で言う。
「私、自販機の中の人でして。普通は誰にも見えないはずなんですが」
「中で何をなさっているのですか?」
「何って、飲み物を作っているんですよ。こうやって」
おじさんは缶を両手に持ってマラカスのように振り、不思議な踊りを始めた。夕空を背景に、おじさんの姿はどこか切なく美しい。
「ほい、できたて」
おじさんから渡された缶を開ける。
それは甘くほろ苦いカフェオレだった。
ある日、撮り溜めた写真を見返していると不思議なことに気づいた。どの写真の自販機の傍らにも同じおじさんが写り込んでいたのだ。
とりあえず近所の自販機へと行ってみた。そのときちょうど自販機が開き、中からおじさんが出てきた。
呆気にとられている私におじさんが言った。
「もしかして、私が見えてたりします?」
頷く私におじさんが困り顔で言う。
「私、自販機の中の人でして。普通は誰にも見えないはずなんですが」
「中で何をなさっているのですか?」
「何って、飲み物を作っているんですよ。こうやって」
おじさんは缶を両手に持ってマラカスのように振り、不思議な踊りを始めた。夕空を背景に、おじさんの姿はどこか切なく美しい。
「ほい、できたて」
おじさんから渡された缶を開ける。
それは甘くほろ苦いカフェオレだった。
ファンタジー
公開:20/11/16 17:00
夕暮れ自動販売機
月の音色
大原さやかさん
朗読
月の文学館
空想と妄想が趣味です。
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