『お酒の美味しくなるストロー』

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「お客様、召し上がる際はこちらのストローをお使いください」
注文のウイスキーと一緒にバーテンが出してきたのは細い植物の茎。
「これが、ストロー?」
「はい。元々ストローは麦藁で出来ていました。環境問題の観点から作られた物です」
「でも、悪酔いしないかい?」
「この麦藁は特殊なものですから。他のお客様も平気でしょう?」
店内の呑み助達はやや酔いが過ぎるようだが、悪酔いしている者はいない。
「しかも、この藁の内にはお酒を一瞬で美味しくする酵母が住み着いています。このウイスキー、実は市販の安物なんですが、呑んでみてください」
麦藁に口をつけ一口吸う。
美味い。ウン十年ものに匹敵する美味さだ。
試しにグラスから直に呑む。その差は明確だった。
「もっと、もっと呑ませてくれ」
「ふふ、早速この麦藁の魔力に飲まれましたね。一度使えば手離せなくなる。酒を渇望し呑んだくれる。溺れる者は藁を掴み続けるのです」
その他
公開:20/09/24 12:33

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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