ソーシャル・ディス・ダンス

まず3Dホログラムとなって現れたパートナーへと手を差し伸べ「Shall we dance?」と問いかける。ホログラムの半透明の手と生身の選手の手が重なり合った瞬間に競技が開始される。
ソーシャル・ディス・ダンスという遠距離社交ダンスの世界大会。参加する選手はそれぞれの自室に設置したディスプレイにパートナーの立体像を映して社交ダンスを踊る。ダンスの技のキレの他に互いの距離がどれだけ離れているか、そしてその距離のハンデを乗り越えてどれだけパートナーと息が合ったダンスを披露できるかで勝敗を決する。
圧巻なのは競技の翌日に行われるエキシビションだ。
無人のダンスステージに世界中から送信された選手達の3Dホログラムが一斉に現れ、舞い踊る。上空から眺めるとそれはまるで咲き誇る光の花園のようだ。
物理的にどんなに隔てられようとも、心と心の距離を隔てることはできない。
このダンスは私達にそう教えてくれる。