競爪

世界には、不思議な競技がある。

パソコンのモニタを投げて、どこまで飛ぶかを競ったり。
つま先レスリング、チーズ転がし、なんてのもある。

そこに新たな競技が加わった。競爪──爪とぎ競争である。
もちろん、参加者は人間。
猫のように木で爪をといで、時間内にどれだけ美しい爪を作るのかを競う。

競技は、爪を伸ばすところから始まる。
長さ、質、形などを、最終形を想定しながら爪を育てていく。
食事や睡眠も、美しい爪に重要だ。

競技では、参加者は樹で爪をとぎ、好きな形に整えていく。
優勝者の爪は、丁寧に切り落とされ、飾られるのだ。

しかしこの競技、ある副作用が問題になった。
競技終了後も爪をとぎたくなる人が続出したのだ。
猫のように、家の壁、柱、街路樹まで、気がつけば爪をといでしまった。

そんなわけで。
今年は参加賞として、爪とぎ板が授与されることとなった。