独り言と空耳
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駅に近い閑静な場所に手頃な貸家も見つかり、私達は新婚生活をスタートさせた。平凡ではあるが幸せな毎日だった。ところが数日前から妻が独り言を言うようになった。ぶつぶつと何かをつぶやいている。やがて辛抱できなくなり、そのことを指摘した。すると妻は「私は独り言なんて言ってないわ。あなたの空耳でしょ」と認めようとしない。険悪な雰囲気になるのを避け、どちらが正しいかを確かめるべく、居間にビデオカメラを設置して二人の様子を録画することにした。翌日、さっそく録画を再生してみた。確かに女の声でぶつぶつというつぶやきが聞こえてきた。
「ほら、君の独り言……」
そう言いかけて、映像の妻を見ると口が動いていない。映像が僅かに乱れ、背後に赤い服の女が現れた。女の唇が不気味に動き続ける。突如、音量が大きくなり、つぶやき声が鮮明に聞こえだした。
「寂しかった。もう逃がさない」
私達が背後を振り返ると部屋が闇に沈んだ。
「ほら、君の独り言……」
そう言いかけて、映像の妻を見ると口が動いていない。映像が僅かに乱れ、背後に赤い服の女が現れた。女の唇が不気味に動き続ける。突如、音量が大きくなり、つぶやき声が鮮明に聞こえだした。
「寂しかった。もう逃がさない」
私達が背後を振り返ると部屋が闇に沈んだ。
ホラー
公開:20/06/23 07:00
空耳
独り言
空想と妄想が趣味です。
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