れいの家族

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この家の中にはそれぞれの家族が過ごした時間が眠っている。互いの時が交錯するとき、そこに愛が生まれる。
「おはよう」
「いただきます」
「ごちそうさま」
「いってきます」
「いってらっしゃい」
「ただいま」
「お帰り」
「お休みなさい」
あと何回、こうして顔を見合い、思いやりに満ちた言葉を交わせるだろう。
「お父さんも早くこっちに来たらいいのに」
高校の制服姿のままの娘が笑う。その隣で妻が寂しげに諭す。
「そういうわけにはいかないのよ」
「じゃあ、いってくるよ」
私は二人に笑顔を向けると出勤した。

「ただいま」
「お父さん、私達、また一緒に暮らせるね」
「運が良いのか悪いのか、わからないけどな」
私は娘の手を取り、妻を抱き寄せた。
私達はドアをすり抜けると空の上から道路を見下ろす。そこには車の下敷きになる私の体があった。事故だった。
だがこれで、私達はまた共に暮らせるのだ。おそらく永遠に。
ファンタジー
公開:20/06/20 07:00
〇〇家族 お蔵出し コンテスト

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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