おとぎの村

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険しい峰を越えたはるばる先にその村はあった。周りを山に囲まれ、現代社会とは隔絶した暮らしを続ける幻の村――人々は「おとぎの村」と呼んでいた。フリーライターである私はこの謎多き村を取材すべく、何とか山を越え、村を訪れた。
不思議な村だった。コンビニはおろか産業と呼べるものは存在しない。村人は詩人や画家といった芸術家しかいなかった。
「ここではどのように暮らしているのですか?」
村長に訊ねると、彼はぷかりと宙に浮いて笑う。
「全ては想像の産物です」
工房を訪ねると、画家が竜の絵を描いていた。途端に風を切り裂く羽音が響き、外に出てみると巨大な竜が空を舞っている。私は恐怖と興奮に震えた。是非ともこの村のことを記事にしたいと村人を集め、私の仕事と便利な文明社会について語った。村人達は熱心に聴いていた。村長はもっと話が聞きたいと私を一晩泊めてくれた。

翌朝、目が覚めると、村は跡形もなく消えていた。
ファンタジー
公開:20/06/17 12:22
はるばる先に 幻想

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。
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