『縁結びのドレス』

1
3

まるで、真珠の粉をまぶしたかのような素敵な白いドレスだった。
家にこんなドレスがあったなんて。文香はそう思った。
「これは、母さんが婚前婚で着たものよ」
「婚前婚って何?」
「死ぬ前にお葬式をする生前葬ってあるじゃない、それの結婚版よ」
「ふ、ふうん」
「あなたももう二十歳だし、そろそろ婚前婚しなきゃね」
「え、私もやるの?」
「当然よ。このウェディングドレスにはね縁結びの効果があるの。それに結婚したあともずっと新婚気分でいられるわ」
文香は納得するしかなかった。この二十年毎日、父と母のラブラブっぷりを見せつけられていたのだから。
「終わり無き縁を結ぶ、縁ドレス。母さんの家の家宝なの。あなたも結婚して女の子が生まれたら着せてあげなさい」
「男の子だったらどうするのよ」
「そのときは父さんの家に伝わる燕尾服を着せなさい。縁に少しの福で”縁微福”だから、このドレスより効果は落ちるけどね」
その他
公開:20/06/17 12:19
更新:20/06/17 12:20

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容