『はるばる先に』

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「女王様、海を渡ってきたというあの者たち、そのまま帰してよかったのでしょうか」
新しく女王の侍女となった夜顔は不安を口にした。
「なにゆえそう思うのかえ?」
「女王の弟君が言っておりました。あの者たちの身に付けた武具は、我が国より遥かに優れていると。もしあの者たちに攻め込まれたらと思うと私は不安なのでございます」
夜顔の不安顔を見て、女王は笑った。
「ほほ、心配性よの。我が国の武器が磨かれていないのは、その必要がないからじゃ。お主が生まれてこの方、戦など起こったことがあるかえ?」
夜顔はしばし記憶を探った。
「ありません。一度も」
「そう、この国は妾が惑わしの結界を張っておる。邪な思いを持つ者は辿り着けんし、そうでない者も方角や距離を違える」
「では、安心してよいのですね」
「うむ。あの者らの記録書でもこの国の位置は間違って記されておる。あの者らにとって、邪馬台国は陽の昇る遥か海の先よ」
その他
公開:20/06/07 14:02
月の音色 はるばる先に 月の文学館

ひょろ( twitterが主。あとは「月の音色」の月の文学館コーナー )

短いものしか書けない系ものかき趣味人
江坂遊先生の「短い夜の出来事」(講談社文庫)に入っているハイパーショートショートに触発されて、短い小説を書いている。
原稿用紙5枚→3枚→半分(200字)→140字(twitter小説)と着々と縮み中w。
月の音色リスナー

目にも止まらぬ遅筆を見よ!

twitterアカウント:hyoro4779

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