世界最速のコンピュータ

0
3

北関東の奥深い山中に建つ研究所がある。
そこで、世界最速のコンピュータが完成しつつあった。

研究室のひとつ。
金属で作られた、長さ1メートルほどのハシゴのようなものが置かれていた。
長さの割に幅が10センチほどしかない。
また、踏みざんには、1本ごとに5個、ひし形の金属の塊が着いていた。

これが、世界最速のコンピュータだという。
あらゆる計算に対して汎用性があり、トラブルにも強く、故障することもほとんどない。

夢のようなコンピュータなのだが、欠点があった。

扱える人が世界でひとりしかいないことだ。
ご高齢で、技術を書き残すことも、誰かに伝えることもできないという。
何より、本業が忙しく、休めないのだそうだ。

その方の職業は、世界一混雑する駅の、ホームにある売店の店員。
独学で覚えたソロバンの計算速度は、研究者たちによると世界一なのだという。
SF
公開:20/07/16 14:15

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

コメントはありません

コメント投稿フォーム

違反報告連絡フォーム


お名前

違反の内容