こころ、温めますか？

真夜中にひっそりと開店する不思議なコンビニがある。その名も「ハート・ステーション」。そのお店を訪れることができるのは心が傷ついた人だけ。失恋して泣き続けたある夜、ふとお腹が空いて部屋の外に出た私の前にそのお店は現れた。涙を拭いながら店に入ると、美味しそうなプリンが目に入った。レジに持っていくと店員さんがにこやかに言った。
「ついでに心も温めますか？」
呆気にとられていると店員さんが手際よく私の胸に手をかざし、ハートの形をした淡い光の塊を取り出してレンジにかけた。
心が温まるまでの間、私はイートインスペースで熱いコーヒーとプリンを食べた。コーヒーの程よい苦味とプリンの甘味はまさに人生そのもののような気がした。
傷つき、凍えていた心が温まると私は笑顔で店を出た。
夜空を見上げると、黄色い満月が私を優しく照らしていた。
「よし、明日も頑張ろう」
私は深呼吸をすると、月に向かって大きく伸びをした。