孤独を癒す舟

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僕はコンビニという空間が好きだ。大げさに聞こえるかもしれないけれど、コンビニが孤独の海に浮かぶ小さな箱舟のように思えるからだ。特に心の闇が深まる真夜中という時間帯においては。
確かにこまごまとした仕事が多くて忙しいことも多い。でも僕はこのバイトを愛している。
この店へ深夜にやってくるお客さんは誰もが愛しい。勉強中に小腹が空いたのか、インスタント食品を調達に来る学生や、入店するなり雑誌コーナーへ直行して漫画雑誌を読みふける男性、夜中に食べるスイーツの背徳感ある美味しさの虜となった女性など、誰もがこの社会の中でどこか満たされない寂しさに耐え、一時のささやかな癒しを求めてこの小さな光の箱に集まってくる。そのときコンビニは暗闇に満ちた宇宙を渡る輝く舟になる。
「いらっしゃいませ」
僕はそんな妄想を抱きながら今夜もお客さんに接する。その人達の抱えるそれぞれの孤独がほんの少しでも癒されることを願って。
その他
公開:20/07/01 07:00
更新:20/06/30 13:03
真夜中のコンビニ

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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