14
10
私がバイトしているコンビニには真夜中を過ぎると、あるお客さんが訪れる。
不意に自動ドアが開き、入店を告げるチャイムが鳴るものの、入ってくる人は誰もいない。というか私には見えない。そういうときは夜の店長の出番だ。私は店の地下へ通じる階段を駆け下りると、そこに置かれた棺桶の蓋をノックして、仮眠している店長を起こす。
「夜の店長、お願いします」
「私の眠りを妨げる者は誰だ?」
「バイトの三橋です。あの、そういう小芝居とかもういいので、お客さんが来ています」
棺桶の蓋をギギッと開くと着ていた黒いマントをバサリと翻し、店長はレジに立つ。レジの前にはおにぎりとペットボトル入りの緑茶がぷかぷかと浮いていた。店長にはその見えないお客さんが見えるらしく、手際よく会計を済ませる。
あなたも真夜中にコンビニを訪れて、ひとりでに自動ドアが開き、おにぎりがレジの前で浮いたなら、出会えるかもしれません。夜の店長に。
不意に自動ドアが開き、入店を告げるチャイムが鳴るものの、入ってくる人は誰もいない。というか私には見えない。そういうときは夜の店長の出番だ。私は店の地下へ通じる階段を駆け下りると、そこに置かれた棺桶の蓋をノックして、仮眠している店長を起こす。
「夜の店長、お願いします」
「私の眠りを妨げる者は誰だ?」
「バイトの三橋です。あの、そういう小芝居とかもういいので、お客さんが来ています」
棺桶の蓋をギギッと開くと着ていた黒いマントをバサリと翻し、店長はレジに立つ。レジの前にはおにぎりとペットボトル入りの緑茶がぷかぷかと浮いていた。店長にはその見えないお客さんが見えるらしく、手際よく会計を済ませる。
あなたも真夜中にコンビニを訪れて、ひとりでに自動ドアが開き、おにぎりがレジの前で浮いたなら、出会えるかもしれません。夜の店長に。
ファンタジー
公開:20/06/29 21:29
真夜中のコンビニ
月の音色
月の文学館
大原さやかさん
朗読
第158回
空想と妄想が趣味です。
ログインするとコメントを投稿できます