〆切家族

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僕の父は作家だ。
文芸誌の連載の合間に単行本向けの原稿を執筆し、ドラマの脚本も書く。〆切直前の鬼気迫る様子は、声が掛けられないほどだ。

そんな父の影響か、兄も創作の道を選んだ。
マンガ家として連載を持ち、机に向かっている。兄曰く、〆切があるから描ける、という。父も同意していた。

母は専門学校講師で、学生を卒業までに就職させるのが仕事だ。

家族の中で、僕だけ〆切がない。
見つけられていない。

なぜなら僕は、不死の身体だからだ。
病気、怪我や老衰で死なないから、無限の時間がある。
そのせいか、期限があるということ自体がピンとこないでいた。

自分にとっての〆切を見つけたら、不死ではなくなるそうだ。
父も母も、そうやって有限の命を手に入れたという。

僕も〆切を見つけたら、家族の苦しみと……喜びが分かるのだろうか。

その期限は、今のところまだ、ない。
ファンタジー
公開:20/05/04 03:45
更新:20/05/06 14:20

蒼記みなみ( 沖縄県 )

南の島で、ゲームを作ったりお話しを書くのを仕事にしています。
のんびりゆっくり。

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