五月の節句

和菓子屋白猫の祭日はとても忙しいと、おばの一家の一員になるとき、そう聞かされていた。

大型連休を迎え、隣の寺の参拝帰りに、柏餅にちまきを買い求める客でごった返す。……例年通りなら。

だが、全国に外出自粛の要請が出された今日は、参詣に訪れる者は数える程。それでも和菓子屋白猫は、通常より短時間だが店を開ける。和人は訪れた客に、菖蒲の葉と厄除けの絵札を渡す。

「和人くんに言われて、アマビエ絵札を作ったのだけど、若いお客様を中心に喜んでもらっているわ」

アマビエ。半身半魚の妖怪で、我が姿の絵姿が疫病逃れになると告げたという言い伝えが、SNSを介して再び広まっている。

「ほら、噂をすれば……」

おばさんが指差す飾り窓の向こうに広がる庭の池に、絵と同じ姿が顔を赤らめていた。



和菓子屋白猫は妖怪が集う店。和人は彼らに人間の手を請われ、家族同然、暮らしている。