温泉電車
10
8
ある日、一人の不思議な装束を纏った老人が通勤電車に乗り込んできた。優先席付近で杖をついたとき、その先が床にめり込み、温泉が湧き出した。熱い湯は瞬く間に全車両を満たした。電車が駅に到着してドアが開かれる度に湯はホームに流れ出るが、源泉から滾々と湧き出る新たな湯が車両を満たす。
最初はパニック状態だった乗客もその湯の心地よさに慣れてしまい、自分達の降りるはずだった駅すら乗り過ごし、湯に浸かってリラックスしてしまった。
それ以来、温泉電車は洗面道具を抱えた朝の通勤客で混み合うようになった。乗客は乗り込んだ早々に服を脱ぎ、下に着ていた水着で湯舟ならぬ湯車両に肩まで浸かる。これから始まる仕事のことを考えると暗い表情になっていた誰もが湯気の中で実に柔和な笑みを浮かべていた。
この温泉電車の運行によって人身事故は激減した。その反面、誰もが湯の虜となり、仕事を無断欠勤する者が急増してしまったのだった。
最初はパニック状態だった乗客もその湯の心地よさに慣れてしまい、自分達の降りるはずだった駅すら乗り過ごし、湯に浸かってリラックスしてしまった。
それ以来、温泉電車は洗面道具を抱えた朝の通勤客で混み合うようになった。乗客は乗り込んだ早々に服を脱ぎ、下に着ていた水着で湯舟ならぬ湯車両に肩まで浸かる。これから始まる仕事のことを考えると暗い表情になっていた誰もが湯気の中で実に柔和な笑みを浮かべていた。
この温泉電車の運行によって人身事故は激減した。その反面、誰もが湯の虜となり、仕事を無断欠勤する者が急増してしまったのだった。
ファンタジー
公開:20/02/04 12:53
博士と助手
小説講座
秋田様からお題拝借
温泉
電車
習作
空想と妄想が趣味です。
ログインするとコメントを投稿できます