ミチルとカケル

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満月が密やかに闇に食べられた月蝕の夜にミチルとカケルは出逢った。
ミチルはカケルと出逢うまで、全てが満たされていた。学生時代はテストをすればいつも満点、彼女が看板娘の旅館「望月」はいつも満室御礼、家族や友人からの愛に満たされ、順風満帆な人生を送ってきた。
一方のカケルはいつも何かが欠けた人生だった。何をやっても決定的な何かが欠けていてうまくいかない。ミチルの旅館の近くに蕎麦屋を開いたが客足はいまいちだった。
そんなある夜、二人は街角でぶつかった。カケルがミチルの手を取った瞬間、二人の間でパズルのピースがピタリと合ったかのような不思議な感じがした。月蝕はいつの間にか終わり、満月が二人を照らしていた。
その後、カケルのかけそばにミチルの旅館特製の温泉卵をトッピングした月見そばが大評判。蕎麦屋は常に満員になった。二人は満面の笑みで喜ぶ。

ミチルは初めて大切な人を愛で満たす喜びを知ったのだった。
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公開:20/04/12 06:00
満ちる 旅館 蕎麦屋

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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