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私はとても怒りっぽい。すぐにカッとなってしまう。
ある日曜の朝、家に男が訪れた。私は怒鳴ってやろうとドアを開けた。
男は黒い壺を取り出して言う。
「そのお怒り、貯蓄してみませんか?」
呆気にとられていると男は続ける。
「この壺に怒りを吐き出して頂きますと貴方様の口座に怒りを貯蓄致します。満期を迎えますと預金として引き出すことが可能です」
面白そうだと壺に怒りをぶちまけた。スッキリした。その上お金になるなんて素晴らしい。
そうして男は定期的にやってきて私の怒りで満ちた壺を回収していった。おかげで私は常に上機嫌。貯蓄の満期が待ち遠しい。
だがその反面、私はまったく怒れなくなった。それはそれで不便だった。少し怒りを返してくれと男に頼んだ。
「では1週間分の怒りを百万円でお売りします」
私は泣く泣く条件に従った。
男が言う。
「悲しみ貯蓄もありますがいかがです?」
その手があったかと私は微笑んだ。
ファンタジー
公開:20/04/11 06:00
満ちる 怒り 貯蓄

蟲乃森みどり( 太陽から三個目の石 )



空想と妄想が趣味です。

 

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